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建築の多様性と対立性

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建築を学ぶうえで、とても重要といわれるヴェンチューリ著の「建築の多様性と対立性」の要約のようなものとしてまとめてみる。

本書は著者でありヴェンチューリの理解者でもあるスカーリの紹介文の"「建築をめざして」以来、建築に関する著作の中で最も重要なものと位置づけられている"という言葉が表すように、コルビュジェヴェンチューリという2人の異なる思想をもちながらも、あるところでは共通している部分を軸に話が進められている。

 

二重の機能

現代建築では二重に機能する要素は用いられず、どちらかといえば、個々の要素を個別化、分離化し、それぞれの素材の特性が重視されている。しかし、そのなかでもコルビュジェやカーンは、例外的に二重に機能する要素をもちいており、それが例えばユニテ・ダビタシオンのブレーズ・ソレイユなどにみられる。

これは、ベランダであると同時に日よけであり、構造でもある。こうした二重の機能はバロックマニエリスムの建築には見られるが、”曖昧”を嫌うためか見られなくなってきている。これは、修辞的要素にも同様なことがいえ、時代遅れといわれ、有効な表現であるにも関わらず用いられなくなっている。

 

つじつま合わせと秩序

建築のデザインだけでなく、プログラムからも建築の多様性と対立性はうまれる。対立性は、秩序において不整合を提示する。サヴォア邸は秩序を設定しているがその中に不整合が認められ、一方アアルトのヴォルフスブルクの文化センターは不整合によって全体の秩序が作られている。このような秩序についてヴェンチューリが述べているのは、建築家の仕事は部分においては慣習的なものを用いながらも、全体としては独自的なものをつくることと考えており、そのために部分を組織し、部分の慣習的なものを慣習から外れたものにしたり、見慣れないものを見慣れたものに置き換えたりするなどし、全体の文脈に変化を持たせるという。こうしてできた文脈は、部分については古く感じるが、全体を見たときに新しく独自なものであるという。

 

対比

建築における対比の例として、スケールの対比が挙げられている。対立スケールが隣接するものは、建築でみられるものは稀だが、それらが生まれるのは偶然の産物であることが多い。建築でよく見られるのはどちらかというと、脈絡なしの隣接であり、これは対立的であるというより、包括的であり多重な意味を持たせ、それを容認させることができるという。

 

バロックロココ建築とヴェンチューリ

本書を通して、数えきれないほどの実例を用いることで自身の論を補ったヴェンチューリであるが、それらの例の多くがバロックロココ建築である。おそらく、イタリアに留学した経験もあることから、それらの影響を強く受けていると思われる。建築の価値として多様性と対立性があると挙げているが、それらはあくまでヴェンチューリの嗜好であり、時代の流れとして必ずしもそうであったわけではない。ミースやコルビュジェなどの建築も踏まえ、改めて建築の価値とは何かを考えさせられる一冊だった。

 

 

建築の多様性と対立性 (SD選書 (174))

建築の多様性と対立性 (SD選書 (174))